The Float

Nikki of タンザニア キリマンジャロ州 Oshara Secondary School と音楽その他

汽車に乗って -タボラ-キゴマ間 前編-

地獄のような長距離バスに乗って着いたタボラ。その日の日記には「明日、エコノミー症候群で死んでませんように。」と書いてある。起きても、カバ女に圧迫され続けていた右ケツは壊死したように痛んでいた。

 

今日の宿にはガスクッカーがある・・・。ホテルのにいちゃんに頼んで、コーヒー沸かさせてもらう。プラスチックのコップしかなかったので、水を入れて薄める。間違いなく熱湯で溶けそうなコップで、みんな紅茶を飲む。危ないぞ~。

 

コーヒーを飲み終えると、タボラの散策に向かった。

 

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(タボラで見つけた看板。BIG BROTHER IS WATCHING YOU!)

 

 

一応、インターネットで汽車の時刻表を調べていたがこの国の時刻表なぞ微塵も信用できないため駅に向かう。

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(タボラ駅。立派!)

 

チケット売り場は、6人しか並んでいないのに長い長い時間待たされた。恐らく、並んでいるやつは”並び屋”で、金と引き換えに客が並ぶのを代行している。一応時刻表のようなものが張り紙ではってあるものの、まったく要領を得ない文章で知りたいことがわからない。「ダルエスサラーム-キゴマ間、月曜日、昼か夕方着」みたいな感じ。

 

ようやく順番が回ってくる。

「キゴマ行きの汽車今日来ます?」

「キゴマ行きは・・・あと15分後に来るよ」

 

うげっ、ホテルに荷物置いてきちゃったよ・・・。宿泊すればするだけお金がかかるので、できたらさっさとキゴマに行きたい。そもそも毎日キゴマ行きは出ていないので、この機を逃すといつ乗れるかわからない。

 

「わかった、おじさん!荷物取ってくるから、チケット書いといて!」

 

ダッシュでホテルに戻って駅に引き返す。結局、汽車が来たのは、その「15分後」を余裕で過ぎた一時間後だった・・・。

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列車は、二等の寝台列車。一部屋3畳ほどの一室に、三段ベッド×2で計6台のベッドが吊るされている。ベッド間の高さは、立てた腿の長さとすこし。座ることはできない。寝ながら日記を書いている。

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たしかに狭いが、バスチケットと同額くらいで、水道付き、トイレ付き、ベッド付きのこの列車は、前日に地獄をみた俺には天国だった。

  

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(ちなみにトイレは案の定穴が開いているだけ。つまり外に撒き散らし。)

 

 

列車はなかなか出発しない。遅れを告げるアナウンスが聞こえる。「ただいま、雨の影響で、曲がったレールを直しております。出発は5時ごろになります」。今は午後の12時・・・・。タンザニア生活早2年近く、怒るという感情はとうに失い、諦めである。

 

同室には、もう一人客が居た。タトゥーをしたブルンジ人の若い女で、キゴマからタンガニーカ湖を越えて、ブルンジに帰る途中だと言った。ブルンジでもスワヒリ語を話すみたいで、会話は全てスワヒリ語だった。

 

 

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やはりどことなく、タンザニア人と違う。

タトゥーをしている。煙草を吸う。服もセンスもタンザニア人よりいい。

そんなにダルエスサラームに行かないので、正直都市の若者の価値観はよくわからないが、これをキリマンジャロでやると、間違いなく「売春婦・ビッチ」の汚名を着せられるだろう。社会的タブーを完全に冒している。なんとなく「女はこういうもの」と、規定・束縛する概念にツバを吐きかけているに思えた。こんな女は、タンザニアで見たこと無い。

 

「煙草、何吸うの?」と彼女は聞いた。「エンバシー」。いつものキャメルのブラックのストックは尽きていたので適当な銘柄を言う。「一本あげるよ」、彼女は持っていたメンソール煙草のパックから、一本エンバシーを取り出して渡す。「ありがとう」と言ってそのまま火をつけた。火をつけると同時にガッタン!と車体が揺れて動き出す。ようやく重い腰を上げて、汽車が動き出した。メンソール煙草のパックに入れられていたせいで、煙草はハッカの味がした。

 

 

強烈な西日に向かって、汽車は走っていく。汽車は、八幡山-上北沢間の各駅停車並、もしくは世田谷線並のスピードでノロノロ進んでいた。

 

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(いい写真に見えるでしょう?実際は、このガキら「チナチナ(中国人中国人)」ずっと俺に言っている)

 

 

延々と変わらぬ風景。メイズ・田んぼ・畑・山・病弱そうな白い肌の木。徐々にあたりは暗くなっていき、強すぎた太陽は、そろそろ地上の支配を終えようとしていた。

 

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窓から身を乗り出して。隣の女と客室で煙草を吸う。彼女は「シャーニ」と名乗った。

仕事はダルでマッサージ師をやっていたが、辞めた。夫はペルー人のジェラルドという40代のおっさん。ブルンジには、今の夫とではない6歳の息子がいて、国籍はセネガルらしい。彼は6歳にして、現地語、スワヒリ語、フランス語を話すそうだ。なかなかインターナショナルな経歴。

 

「ん?ちょっと待って、若そうに見えるけど今何歳?」

「24歳の11月生まれ」

 

なんと俺とたった5日の差だった。

ということは18で子供を産んでいる。もちろんアフリカでは全然珍しいことではないけれど、自分が18の頃を思い出すと何か不思議な気持ちになる。まだ、制服着て、放課後にバスケをやっていた同じ頃、彼女は子供を産んでいる。

 

いつもなら、別に価値観の違うタンザニア人の人生に干渉する気はないが、彼女はタンザニアの女性像をはみ出しまくって特別好意的に思えたので、少し突っ込んだ話をする。

 

「その夫のペルー人のこと好きなの?」

「世の妻がそうであるように好きだよ」

「へえ、夫はダルに居るの?」

「今はペルーにいる」

「いつ帰ってくるの?」

「わかんない」

 

もしかしたら、話に聞く現地妻ってやつかもしれない。

 

「まあ、あんたの人生だからあんた次第だけど、ペルー人と別れて、タンザニア人かブルンジ人の彼氏作ったほうが良いんじゃない?あんた可愛いし、きっといい男つかまえられるよ」

余計なお世話だろうなぁと思いつつも、口が滑ってしまう。

 

タンザニア人の男はヤダ。あいつら浮気ばっかりでセックス目的だから!」と返す。

うん、たしかに・・・。否定できない。

 

「前にキオスクで、私の胸触ってきたやつがいてさ、玉蹴って警察呼んでやったわ。クラブでも、クソヤローが私のケツ触ってきて、もう靴で血が出るまで殴ってやったよね。私は売春婦じゃねーっつーの!だからタンザニア人を夫にするのは絶対ヤダ!」

 

最高!笑

 

今でも相当に腹が立っている様子で、饒舌にセクハラ体験をしはじめる。今まで手加減してたであろうスワヒリ語が、完全にネイティブのスワヒリ語になる。まったくわからないが、適当なタイミングで相槌だけうつ。初めは、もしかしたら水商売のマッサージ師なのかな(ダルにはあるらしい)と思ってたけど、違ったようだ。

 

 

話しているあいだに彼女の煙草が尽きて、俺の煙草も最後の一本になる。シャーニは俺に見せないように、タンクトップの下からブラを脱ごうと格闘していた。二つの肩甲骨は魅力的に可動範囲をグリグリ動いている。俺は半分吸った煙草をシャーニに渡した。彼女は「ありがとう」と言って、肩甲骨は息を止めたように沈黙する。

猫背ぎみで、タイトなタンクトップから腹が少し出ている。Geraldと彫られた指は、窓際と口もとを往復する。その姿は、なんとなく疲れた、倦んだ、諦念、悲劇的な印象を俺に与えた。

 

10時頃、寝る。

 

 

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(このYUKIが殺人的に可愛いのに、どうやら日本国外からは見えないようです。)