The Float

Nikki of タンザニア キリマンジャロ州 Oshara Secondary School と音楽その他

Highway to Hell -地獄のみちづれ タボラ編-

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タボラについたときの俺の顔。

 

 

ウテングレから街に帰って来たついでに、バスチケットを買おうとバススタンドに寄る。なんとなく、寝台列車に乗ってみたかったので、駅のあるタボラまで長距離バスで行って一泊し、汽車に乗って西に行こうと思った。

 

バスのオフィスで、「タボラに行きたい」と言う。「はいよ、35000シリングね」

さ、さんまんごせん(約1700円)・・・・?モシからダルエスサラームまで、良いバスで行くとそのくらいだが、ムベヤからタボラで・・・!?

 

 

ああ、なるほど、よくある外人ボッタクリね。チャガ人*を舐めるなよ。

*チャガ人。キリマンジャロ周辺に住んでいる民族。性格的に勤勉と言われる。ただ、コーヒー栽培+観光資源で比較的経済的に恵まれているやっかみからか、他の民族から「金好き、ケチ」のステレオタイプで貶される。

 

そういうときは「嘘つけ~、そんな高いなら乗らな~い、もう宿帰る~、バイバーイ」。ようはカマをかけるのだ。

ボッタクリならこれで「ちょっと待った!いくらなら出す!?」と引き止めるはず。外に出ながらチラチラ後ろをみて「おら、引き留めろ、引き留めろ」と念じる。

 

オフィサー「ばいばーい、おやすみ~」

 

う、嘘だろ・・・。

ちっ、舌打ちしながらオフィスに戻り結局チケットを買う。

 

俺「いくらなんでも高くない?」

バス会社「規定料金だよ」

後ろのおじさん「タボラまでチケットくれ」

バス会社「はい、35000シリングね」

 

おじさん、三万五千払う。

どうやら本当に規定料金みたいだ・・・。高いなぁ。

 

 

翌朝5時半、時刻通りにバスが出た。

出発して2時間くらいは、霧の中の山道を移動する。山間の澄んだ空気。鋭い風が窓から俺を差した。寒いが、寝ぼけた頭に冷たい風がきもちいい。太陽が出てくる。太陽の光が霧に拡散されて、ぼんやりおぼろげな明るさを作っていた。バスは高速で道路を走っていく。

 

がたがたがた、振動で起きる。いつの間にか道路は未舗装道路になっていた。つまり、ただの土。風景は、ディズニーランドのジャングルクルーズ(だったっけ?)のよう。

まあ、移動でこんな自然が楽しめれば儲けもんだよね、カバとかワニとかいるんじゃねーの?ラッキー。

 

まだ、ポジティブである。

 

バスは、未舗装道路をものともせず、がったんがったん高速で走る。開けている窓からは、俟いあがった粉のような砂埃が入ってきて、手のひらのウォークマンを砂だらけにする。拭いても拭いても砂だらけなので、もう諦めた。

 

人が乗ってくる。道路沿いでバスを待っている全ての人を乗っけていく。普通、長距離バスならば、道路で客を乗っけることはそんなにない。だいたいどこにでも私営バスが安い料金で走っているからだ。あっという間にバスは、インドかどこかの電車よろしく、ぎゅうぎゅうで窓も閉まらず、乗り切れない乗客は手すりを掴んで窓からはみ出す状態にまでなった。

 

チケットを持っている僕は、席が用意されているが、さすがにこの乗車率では、まったく身動きがとれない。

しかも、俺の隣には、象やカバを想像させる推定150kgの巨体の女。しかもワキガ。その女の手が、窓側に座っている俺の、文字通り目の前を通りすぎて窓枠にしがみつく。ブクブク、ブヨブヨとした茶色く、俺の腕の五倍以上の体積があるだろう二の腕。

おおよそ人の腕には見えない。その酸っぱい饐えた臭いから逃れようともがくも、彼女の脇の下は無慈悲に俺の右肩の上に乗っている。三国志で、董卓が処刑され、遺体が燃やされたとき、三日間(だっけ?)燃え続けたらしい。この女はもっと燃えるぞ、きっと。

 

どうにか身体を伸ばすが、もう限界に来ている。そのカバ女は、英語で俺に話しかけてくる。”This is Africa.”。ははは・・・・と返すも、あんたほどの巨体はうちの村じゃいねえよ、とよほど言いたかった。それを聞いた添乗員(ケレレ*と呼ばれていた)が「おいデブちん、おめーの彼氏の中国人カンフーマスターかー」と囃す。もはや、いろいろ我慢が限界の俺は「おい、てめえ、車降りろ、ぶっ殺すぞ」と日本語で脅す。ビビって人のせいにする添乗員。ビビるなら突っかかってくんなよ・・・。

*ケレレ。スワヒリ語でうるさい、騒ぐ。たしかにやかましいヤツだった。

 

灼熱・悪路・乗車数・饐えた臭い・目の前に伸びるブヨブヨの腕。バスは14時間かけてタボラに着いた。

 

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(宿についた俺の顔)

 

道中で気づいた。この乗客のうち10人くらい添乗員だ、と。

聞くと、こいつらの半分は車のテクニシャンで、バスが故障した際に直す役目なのだ。ムベヤ-タボラ間は、悪路の長距離のためバスがしょっちゅう故障する。それ故、多くのバス会社はムベヤ-タボラ間を運行したがらない。結果、需要はあるが供給が少ないこの路線の運賃は当然高くなる。あーなるほどなるほど。

 

今まで乗った全ての乗り物の中で、最も、そして人生最悪にカオスな長距離バスでした。 

景色自体は、朝の霧もステキだし、未舗装もジャングルクルーズみたいで面白いので、カオスなバスを体験したい物好きにはオススメです。(僕はもう二度とこんな思いしたくないです。)

 

当然、今日の曲はコレ。

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5日目、総移動距離1674km 

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